台湾の大学に進んだら、日本の就活に乗り遅れてしまうのではないか——留学を考えるとき、そんな不安を抱く人も多いはずです。結論から言えば、台湾にいながら日本企業の選考はほとんど進められます。ただし、進め方は日本の大学に通う学生とは少し違います。ここでは、修士2年が始まったこの秋に、台湾から就活をしている私の経験をもとに、応募から面接までの流れを紹介します。
まず確認しておきたいのが、自分が何年卒として扱われるかです。台湾の大学院は夏に修了します。私は2027年8月の予定で、日本企業からは2028年4月入社の「28卒」として扱われます。台湾では修士2年ですが、就活の上では日本の修士1年生と同じ学年になるわけです。
日本の就活には、政府が毎年企業に求めている日程があります。卒業前年の3月に企業の広報が始まり、6月に選考、10月に内定というものです。ただし、これは法律ではなく企業へのお願いで、実際には多くの企業がインターンシップなどを通じて、もっと早くから選考を始めています。そして、海外の大学に通う学生の多くは、この国内の流れとは別に用意された、海外大生向けの選考枠を使います。
その入口になるのが、CareerForum.netという就活サイトです。日本語と英語を話す海外大生を対象にしたサイトで、毎年11月にアメリカで開かれるボストンキャリアフォーラムをはじめ、東京やロンドンで開かれる就活イベントの窓口にもなっています。求人は、イベント会場で面接をする枠と、オンラインで選考が完結する枠に分かれています。私は現地に行くと決めたので、主にボストンの枠に応募しました。企業によってはどちらか一方の枠にしか応募できず、オンラインの枠で書類を出すと、あとから切り替えられないこともあります。応募する前に、ボストンへ渡航するかどうかを決めておくと迷わずに済みます。
CareerForum.netでは、サイト上で作ったレジュメを企業に送って応募します。送信した時点の内容が企業に届き、あとから直すことはできません。逆にいえば、応募のたびに書き換えられるということでもあります。私は応募先ごとに、志望動機と自己PRを書き分けました。
レジュメを送ると、次は企業ごとの採用ページ(マイページ)に案内されます。ここから先は、日本の学生と同じように各社の選考が進みます。私がこれまでに台湾から提出、受験したものは次のとおりです。
- エントリーシート
- 自己PR動画
- AI面接(面接官の代わりにAIが出す質問に、カメラに向かって答える形式)
- Webテスト(会場に行かず、自分のパソコンで受験)
- テストセンターでの適性検査
- 履修履歴の入力と成績証明書
- 研究内容をまとめた資料
求められるものは企業によってさまざまで、9月から10月にかけては、締切が毎週のように重なりました。
テストセンターの試験は、自宅ではなく指定の会場で受けるものです。日本に一時帰国しないといけないのかと身構えましたが、私が受けた試験は台北市内だけで5か所の会場があり、台湾にいながら受験できました。また、一度受けた試験の結果をほかの企業に送り直せる仕組みもあるので、同じ試験を何度も受けずに済む場合があります。
書類とテストを通過すると、オンラインでの面接に進みます。私の場合、企業の担当者とのカジュアル面談はビデオ通話で、一次面接もオンラインで案内されています。ここで、台湾から就活をするありがたさを感じます。台湾と日本の時差はわずか1時間で、日本時間15時の予定は台湾の14時です。アメリカやヨーロッパの留学生が深夜や早朝に面接を受けていることを思えば、時差はほとんど気になりません。気をつけるのは、締切や面接の時刻がすべて日本時間で書かれていることくらいです。
ただし、すべてがオンラインで完結するわけではありません。企業によっては、二次面接以降をボストンの会場で、最終面接を日本で、それぞれ対面で行います。私も11月にボストンへ向かう予定です。ボストンでの体験は、別のコラムで改めて紹介します。
ここまで書くと順調に聞こえるかもしれませんが、思いのほか手間がかかったのが日程の調整です。台湾と日本では祝日が違います。日本の平日が台湾の祝日に当たり、ほかの用事もなく、すんなり面接を入れられた日もありました。反対に、珍しく予定が空いた日が日本の祝日で、面談を申し込めないこともありました。候補日を選ぶたびに、両国のカレンダーを見比べる日々でした。
そして、いちばん苦労したのは面接を受ける場所でした。私は大学の寮の二人部屋に住んでいます。ルームメイトのいる部屋では、オンライン面接はもちろん、カメラをオンにして受けるWebテストもできません。そこで大学の会議室や図書館を探すのですが、その時間に合わせて静かな場所を押さえるのは、想像以上に難しいことでした。どうしても見つからないときは、キャンパスの中でも人通りの少ないベンチを選び、スマートフォンのテザリングにつないで、青空の下で面接を受けました。そんな日も何度かあります。これから台湾で就活をする人には、面接の日程が決まったら、まず受ける場所を確保しておくことをおすすめします。
情報の面でも、頼れるものは多くありませんでした。日本の就活について話せる相手は、同じ大学に通う日本人留学生くらいで、互いに知っていることを共有し合うのがやっとでした。選考の流れや締切は、CareerForum.netや各社の採用ページを自分で読み込んで確かめるしかありません。
台湾にいることは、時差の小ささという点ではむしろ有利です。その一方で、祝日の違いや面接の場所、情報の少なさといった、日本にいれば気にせずに済む小さな壁がいくつもあります。どれも、前もって知っていれば備えられるものばかりです。まずはCareerForum.netに登録して、自分の卒業年度の求人を一覧で眺めてみるところから始めてみてください。
次回は、台湾企業に就職する場合の流れと、日本の就活との違いを紹介します。
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